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be melted.

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それからしばらくは、メールと電話でのやり取りが続いた。

メールが、電話が来る度に私の想いはどんどん膨らんでいった。

…向こうの気持ちはわからないままだったけれど。



いつの間にか雪は溶け、ふと周りを見渡すと桜がちらほら咲き始める季節になっていた。

私は進級し受験生になった、というよりなってしまった。

出来るならばなりたくなかった。

彼が受験勉強の妨げになるといけないから、とメールや電話の回数を減らすと言って来たのだ。


せっかくの、唯一の楽しみが奪われてしまうようで悲しかった。

私の中で彼はこんなにも大きな存在になっているのに。


連絡のない夜はとても寂しい。

もしかしたら嫌われてしまったのかも、と不安が心を駆け巡る。

私はひとり、そんな思いに駆られながら眠れない夜を過ごした。


来なければいいのに、夜なんて。

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話が弾むにつれ、私の緊張も徐々に解けていった。

メールを通じて接していた彼と全く違和感がなかったお陰もあると思う。

こんなに楽しいと思えたのは何時ぶりだろうか。


気が付けば、時計の長針が二周するくらいの時間が経っていた。

夜もいい頃合いに更けて来ている。夜空にはきれいな星も見える。


これ以上話したら電話代が大変なことになっちゃうね、なんて言いながら。

互いの距離を考えると既に大変な状態には間違いないのだけれど。

名残惜しくて、なかなかおやすみが言い出せなかった。


やっとの思いで、おやすみ、と受話器を置いた。

周りに誰もいなくてよかったと本気で思う。

その時の私の顔は、ゆるみっぱなしでどうしようもなかったはずだから。



この胸の痛みは、もしかしたら神様からの合図なのかもしれない。チャンスを逃すな、と。

ここまで苦しくなる程人を好きになることなんてなかったし、これから先どう行動すればいいのかもわからないけれど。


この電話を機に、私は自分の想いを受け入れる決心をした。

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始めはこの変化を受け入れることがなかなか出来なかった。

知り合ってたった数ヶ月で。しかも顔すら見たことがない。声も聞いたことがない。


なのにどうして、どうして惹かれてしまうのか。


しばらくの間、苦しい想いを抱えながら自問自答を繰り返していた。

どう考えてもおかしい話である。会ったこともない人を好きになるなんてーーー



木々が色付き始め、夏服から冬服への衣替えを終えた頃。

震える手で受話器を握りしめている私がいた。


彼から電話のお誘いがあったのだ。

私はびっくりしたと同時にとてもわくわくしていた。

どういう意図で提案してきたのかわからないけれど、ただ話せるチャンスが出来たということだけで嬉しかった。


家族が寝静まった深夜。リビングに一人。

受話器を手に取り、何度も確認しながら番号を押す。プルル、プルル、と呼び出し音が鳴る。

電話をかけるのに、かつてこれほど緊張したことがあっただろうか。


そして受話器の向こう側から聞こえてきた声は、優しかった。

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それは夏が終わりに近づき、少しだけ秋の匂いがしてきた頃だったと思う。


昼食はいつも母の作ったお弁当を食べていた。

さすが何年も作り続けているだけあって、娘の好みが熟知されているお弁当だった。

食べることと寝ることが取り柄だった私は、毎日その時間を楽しみにしていたのだった。


突然、そんな私に変化が起きた。


お弁当を食べ切ることが出来なくなってしまったのだ。

頑張って食べよう、食べようと思っても胸がいっぱいでご飯を飲み込めない。

嫌いなおかずが入っていたとか、味付けを失敗してたとかそういう訳ではない。

とにかく胸がいっぱいで苦しくて、どうしようもなかった。


生まれてからこんな体験をしたことはなかったので、何が原因なのかもさっぱりわからなかった。

何か変な病気にでもかかったのかとすら思った。



でもひとつ、気づいたのだ。


彼とメールをしている時、少しだけ、苦しさが和らぐことに。

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どこの誰だか、性別すらわからない状態で送信ボタンを押すのは少し勇気が要った。


きっと普段の私なら出来ない芸当だ。

でもなぜか無視出来なかった。

私の背中を押してくれたのは何だったのだろう。



互いにアドレスしか知らない関係から始まったやり取りは、思っていたよりも楽しかった。


やり取りを続けるうちにアドレス以外の情報も色々とわかってきた。

私の知らない遠い街で働いていること。

眺めのいい高台に住んでいること。

新人教育を任されて最近てんてこ舞いなこと。


対して私も、担任の口癖が変だとかたわいもない世間話ばかりだったけれど。

メールが届くのを楽しみにしている自分に気づくのはそう遅くはなかった。

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その日は溶けてしまいそうな位暑い日だったと覚えている。


じめじめとした梅雨が終わりを告げ、空を見上げると眩しい日差しが目に飛び込んでくる。

世間はもう夏休みだ。近所の子供達が暑さに負けず元気に遊んでいる。


夏休みと言えども、私のような学生にはあってないようなものだ。

学校と家の往復。普段と変わらない毎日。



あまりの暑さで頭が茹だっていたのかもしれない。

もしくは平凡な毎日に刺激を求めていたのか。

それは今となってはもう、わからないことである。



はっ、と。携帯のバイブレーションで目が覚めた。

寝ぼけた頭で、学校から帰宅してそのまま寝てしまっていたことをかろうじて自覚する。

携帯の時刻を見るとまだ夕方前だ。そして見知らぬアドレス。


--こんにちは。もしよかったらメールしませんか?--


たった一文だけのシンプルな文面だった。

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